トラッカーウォレットのジッパー周りについて①

今回は目には見えない部分、お客様からすると普段あまり意識しないと思われる製作面のお話しになります。

トラッカーウォレットのジッパー周り(コインポケット部分)についてです。


以前、この辺りのことをお客様に説明する機会があり、とても嬉しい反応を頂けたので書きます。

まず、ジッパーテープですが、基本的にポリエステルテープとコットンテープの2種類の素材があります。

●ポリエステル


【メリット】
 ・コットンテープより耐久性に優れる
 ・テープの端を焼いて処理できる(製作面のメリット)
 ・コットンテープと比較してコストが安い
【デメリット】
 ・化学繊維特有の人工感があり、経年変化をするタンニン鞣しの革との相性が良くない。革が経年変化していくとより浮いて見える。(個人的見解)

●コットン


【メリット】
 ・天然繊維特有の落ち着いた色味、素材感、質感
 ・使用につれ、テープカラーがフェードし、自然な経年変化を楽しめる。
 ・タンニン鞣しの革との相性が良い。
【デメリット】
 ・ポリエステルと比較して、耐久性がやや劣る(脆いということではない)
 ・ポリエステルと比較して、コストが高い

※一部、メリット デメリットが表裏一体の部分もあると思いますが、あくまでLWBのものづくりに落とし込んだ場合の考えになります。

こういったそれぞれの特性を考慮し、LWBではコットンテープを採用しております。

ただ、LWBのコンセプト LWBのものづくりについて にもある通り、長年の使用を想定している為、リペアは極力少なければ少ないほど良いと考えております。
”修理が出来ること”を前提としたのづくりであって、”修理が発生すること”を前提としたものづくりではない。といった感じです。

そこで、コットンテープを使用するうえで、製作工程にある工夫をしております。

通常、製作効率を意識した場合、革にジッパーを貼り付けた後に縫い穴を開けていきますが、LWBではジッパーを貼り付ける前に縫い穴を開けます。

具体的にどの様な違いがあるかというと、前者の場合、テープ部分を菱ギリ(縫い穴を開ける道具)で刺す形になるので繊維が切れている状態です。
後者の場合、テープ部分は縫い針の穴のみになるので、繊維が切れるというよりかは繊維の隙間を通っている形になります。

勿論、後者の工程の方が生産性は劣りますが、我々のAll Hand Madeによる、極少量生産ならではのものづくりと言えます。
短期間の使用では大きな違いはありませんが、長年使用し続けた時に、違いが出てくると考えております。

また、LWBでは部位によって縫い糸の太さを調節しており、こちらのコインポケット部分は細めの糸を使用しております。

以前、TRUCKER WALLET-01の製作動画をYouTubeにupしております。


革の切り出しから完成まで撮影しており、勿論、今回書いた工程も含まれますので、是非お時間のある時にチェックしてみてください。